((出掛け先で鉢合わせ))









「お、氷帝のイチャップル!」

「誰のことですか」

「なになに〜、黄金ペアさんもデート?」

「デート、っていうか初詣かな。ほとんど物食べてるけど」

「いいなー。ひよしーおれらも何か食い行こうよ」

「さっき蕎麦食ったでしょう」

「あー、今家に蕎麦ある? あれば作る」

「ある、かな」



























(それまでのおはなし)(ジロ若篇)




かんっ、と叩きつけるように勢いよくスプーンをテーブルに置いて、同じく勢いよく日吉! と呼ばれた後、

「リベンジ、しよう!」
「は?」

もっと勢いよく言われたその言葉に日吉が返せた言葉は、あまりにも間の抜けたものだった。
箸を持ったまま一応問う。

「リベンジ、って、なんのです?」
「初詣の!」
「初詣?」

初詣なら行ったことあるでしょう、何度か、と問い返す。揃えて箸を置いた。
跡部邸の無駄に長い黒塗りの車で大騒ぎをしながら行ったこともあるし、ふたりで正月の昼間に歩いたこともある。

「ほら、中3ん時さ、俺が。夜は行けませんーって言っててさ、行けなかったじゃん」
「ああ、あれはアンタがあまりにも急だったからでしょう。中学生が何調子乗ってたんですか」
「うー。だって行きたくなっちゃったんだからしょーがないじゃん」

若気の至りですよ、と腕を組みしたり顔で頷く芥川に、計画性のなさは今も変わりないでしょうとスパッと言い放つ。

「で? それでリベンジですか?」
「おう! だからさ、大晦日の夜、っつか年またいで行こうぜー、いいよな、な?」

目の前で、瞳をきらきら煌めかせて「蕎麦オゴるし!」と身を乗り出しているとても年上には見えない相手を見て、上がる口角を隠すように柔らかくなる眼差しを隠すように、俯いて溜め息をついた。






















(それまでのおはなし)(大菊篇)




「今年さあ、大晦日行ってい?」
「俺は全然構わないけど、家の方はいいのか?」

頬杖をついてストローをくわえた上目でそうそう聞かれた。
菊丸の口調は質問というよりはどちらかというと確認の色が濃く、もうそれを予定に組み込んでいるんじゃないかと思った。

大石の両親は夫婦水入らずで年越しの旅行をするらしいので、家には三が日で帰ればいい。

大石自身はそういう事情だが、菊丸家は大丈夫なのだろうかと得意の心配性を発揮したのだった。

「色々の手伝いがあるから逃げるんじゃん」
「手伝い、しなくていいのか?」
「いるから任されちゃうの! いなきゃやんないことをいるからやるっつって押し付けられんだよ」
「………もしかして、お姉さんたちも毎年いなくなってる?」
「もち。兄ちゃんもだぜ? いないやつが増えると負担増えんの」

正面に座る菊丸のジュースがごぽっと音をたてる。

「おおいしー、おれのこと見殺しにしないよなー? 避難させてくれるよなー?」
「英二の家がいいならおいで」
「別に道連れで逃避行してくれてもいいぞー」
「大人しく避難所になりますよ」
「サーンキュ」
「大事な英二くんを見捨てるわけにはいきませんからねえ。初詣でも行く?」

おーいいねー行こ行こ! と菊丸の弾んだ声を聞きながら、少しぶりの美味い朝食を期待した。











元旦の0:00の日記から。
そういえばうちのこたちって遭遇したことないなあと思いまして。
ちょっとは短めに出来たんじゃなかろうかとドキドキです。
うちの大人話はその話によってどっちも一人暮らしだったり片方だけだったり二人暮らしだったりします。設定をまとめられていない…!
100312